Language : English Japanese
オーストラリア ゴールドコーストの日本人公認会計士事務所
メルマガ【4月号】

連邦政府の予算案発表

2019年4月2日に、連邦政府予算案が発表されました。5月18日の総選挙を前にした予算案発表ということで、各所得層に対する減税案が発表されました。2019/20年度の連邦予算案詳細にご興味がある方は、当所のHP↓をご参照ください。

http://ybabs.com.au/federal-budget2019-20/

 

A.B.N.の一斉キャンセルにご注意

皆さんの中で、知らない間に、ご自分のオーストラリアビジネスナンバー(ABN)がキャンセルされているということが、最近ありませんでしたか? これは、オーストラリア国税局が行っている一斉ABN取り消しプロジェクトによるものである可能性があります。

一斉取り消しプログラムの対象となるのは、以下の場合のようです。

  • ABNを持っているけれども、しばらく活動していない。
  • 事業をたたんでしまったけれども、正式にABNをキャンセルしていない。
  • ABNからの収入や経費があるけれども、申告していない。
  • 事業活動はしているけれども、そのことを会計士に話していない。
  • 雇用主に、雇用するからABNを取るように強制された(本当は従業員なのに)。

もしも、一斉取り消しの一環として、ご自分の事業のABNが取り消されてしまった場合には、事業形態が以前と同じであれば、再申請することができます。ATOの決定が誤りであるとお考えでしたら、担当の会計士さんにご相談してみてください。

ABNシステム自体の改革も見直されているようで、会社やビジネスネームと同様に、定期的な更新と更新手数料支払いを求めることを政府は検討中です(現在は、ABN登録は無料、一度登録すると、定期的な登録更新の必要はない)。

しかし、ABNの取得や更新が面倒になると、事業主の中には、ABNなしで(闇の)事業を行う輩も出てきてしまう可能性もあることが懸念されています。そうなると元も子もなくなりますね・・

 

税理士資格を失ってしまった残念な話

この税理士さんは、顧客の税申告において、以下のような「出来心」を起こしてしまったため、税理士資格を失ってしまいました。

  • 顧客のペットを、番犬だと偽って餌代や獣医代を経費として申告
  • 自分と家族の食費を従業員への福利厚生として申告
  • パーソナルトレーニング費や子どもの学費を、仕事上のトレーニングや会合費だとして申告
  • IBMの営業マンの税申告において、その営業マンの7歳の息子が電話番をするという理由付けをして、$5,388の秘書サービス代行費として、経費計上

 

この想像力は見習いたいところですが、それを発揮する場所を間違ってしまったようですね。皆さんのタックスリターンを用意するにあたり、こういった案を提供され、「そんなことをしても良いのか?」と思った場合には、大体において「そんなことをしてはいけない」場合が多いかと思うので、ご注意くださいませ。

 

税金上の居住と非居住者– Harding v Commissioner of Taxation 【2019】FCAFC29

このケースは、一度正しいと決定されたATOの査定に対して上訴した結果、納税者が勝訴したもので、特に海外赴任している、またはこれから赴任するオーストラリア人に注目されています。とはいえ、状況が似ているからと言っても、それぞれの納税者の状況は微妙に違います。この判決をもとにご自分の申告義務を簡単に決めるべきではないでしょう。以下、ケースの詳細です。

ハーディング氏は、サウジアラビアで航空機エンジニアとしてのフルタイムの仕事に就くために、2009年にオーストラリアを発ちました。彼はバーレーンのアパートに住み始め、サウジアラビアに毎日通勤していました。 このアパートは、いわゆるサービスアパートメント(長期で住むというよりは、仮住まい的な用途に使用)でしたが、それは、ハーディング氏が、家族と一緒に住む家を購入する予定があったためです。実際に、ハーディング氏は、オーストラリアの家族を2011年に迎えるための準備をしていました(末の息子が高校を卒業するのを待って)。ハーディング氏はバーレーンで妻のために車を購入し、バーレーンの学校で彼の末っ子を登録し、妻が訪問したときバーレーンで家族の家を探しました。 (残念ながら、バーレーンに引っ越してくる前に、ハーディング氏と妻は離婚してしまいましたが)

このような背景から、ハーディング氏自身は、オーストラリアの非居住者だと考え、サウジアラビアでの所得を、オーストラリア国税局 (ATO)に申告していませんでした。しかし、ATOは、ハーディング氏が住んでいたサービスアパートメントを暫定的な仮の住まいだとして、ハーディング氏に対して、2011年度について「申告漏れ」の通知を送付してきました。

第一審では、ハーディング氏は敗訴しました。しかし、これを不服として、ハーディング氏が上訴した結果、連邦最高裁判所は、ハーディング氏が一時的な宿泊施設に住んでいたにもかかわらず、恒久的に海外に居住していると判断し、ハーディング氏はオーストラリアの非居住者であるとの判断を認めました。

この判決により、納税者が「恒久的に住む場所」がオーストラリアであるか国外であるのかを決定するのは、オーストラリアを居住地として放棄したかどうかであり、海外の恒久的な宿泊施設に住んでいるかどうかではないということが確認されました。

特に、最高裁判所は、「住居の場所」という語句は、その人の家やアパート、その他の住居を指すものではなく、むしろその人が物理的に永住している町または国を指すものであると考えました。

 

異業種交流会のご案内

最後は、ゴールドコースト異業種交流会のお知らせです!ゴールドコーストには、たくさんの日本人、そして日本に興味がある人達が暮らしています。皆さん、多岐にわたる分野でご活躍中だったり、あるゴールを目指して計画中、勉強中だったりしているかもしれません。または、こんなアイディアがあるけれども、誰かに話してみたいな・・・こんな人材を探しているんだけど、なかなかいないなぁ。なんて思っているかもしれません。異業種の人たちと出会い、楽しみ、情報交換する場所として、本会をご活用ください。入会金も必要ありません。可能な時にイベントにご参加ください。

記念すべき第一回GC異業種交流会は、5月8日(水)です。

昭和生まれも平成生まれも令和元年をお祝いしてみんなで盛り上がりましょう(もちろん大正生まれも明治生まれも可能であれば)。学生さんもワーキングホリデーさんもウエルカム。

詳細は、こちら↓

https://www.facebook.com/events/390020404920867/

出席希望の方は、以下までメールをお送りください。または、フェイスブックよりご連絡ください。4月中にお申込みの方には、アーリーバードディスカウントあります。

gcigyoshu@gmail.com

 

******************************************************************

上記の内容について、ご質問やコメントがありましたら、以下までどうぞ!

info@ybabs.com.au

 

2019/2020年 連邦政府予算案

2019/2020年 連邦政府予算案 概要

連邦政府財務大臣のJosh Frydenbergは、2019年4月2日午後7時30分に、2019/20年の連邦政府予算案を発表しました。

 

2019/20は、$7.1Billion(71億豪ドル)の黒字、しかも12年ぶりの黒字予算が見込まれる中での発表ということで、増税無くしての各方面への投資が実現できることを、Frydenberg氏は、幾度となく強調しました。

 

以下に、主な予算案内容を解説します。

 

個人納税者所得税関連

減税案

低所得者と中所得者の税率が低くなります。2022年7月1日からは、現在の所得範囲が$18,201~$37,000までの納税者に適用される19%が、$45,000の所得まで適用されるようになります($45,001~$120,000までは32.5%)。また、2024年7月からは、$45,000から$200,000までの所得に対しての税率が32.5%から30%に減税されます。(現在は、$90,000から$180,000の所得に対しては37%の税率が適用されています。)

 

低所得、中所得者への控除

2019年度より、低所得者と中所得者については、最高$530の税控除が適用されています(LMITOと呼びます)。 しかし、今回の予算発表により、控除額を最高$1,080まで引き上げると発表しています。この他に、低所得者のみへの控除額$445(LITOと呼びます)は、これまで通り適用されます。(所得によっては、LMITOとLITOの両方が適用されますが、上限は$645です)

 

しかし、LMITOが適用されるのは、2022年度まで。LMIT、2022年7月1日より、LMITOとLITOはひとつになり、最高で$700の控除となります(前年度の予算案では$645でした)。

 

事業主所得税関連

小規模事業主のための固定資産一括償却が中規模事業主にも適用

これまで、小規模事業主の固定資産一括償却の限度額は、$25,000でしたが、これが$30,000まで引き上げとなり、中規模事業主も対象となります。

*小規模事業主とは、年間のグループ売上が100万ドル($10 Million)未満の事業主のことを指します。

詳細は、以下の通りです。

1)いずれも対象は小規模事業主で、使用を始めた、または使用が可能になった時期により、一括償却できる上限額が異なるので注意

  • 2018年7月1日から2019年1月28日まで → $20,000未満
  • 2019年1月29日から2019年4月2日午後7時半まで → $25,000未満
  • 2019年4月2日午後7時半以降、2020年6月30日まで → $30,000未満

 

2)尚、2019年4月2日午後7時半から2020年6月30日までの期間については、グループの年間売上が100万ドル($10 Million)以上500万ドル($50 Million)の中規模事業主にも$30,000一括償却は適用されるようになります。

 

Division 7A 変更を延期

会社が、給与や配当としてではなく、株主やその家族にお金を貸して、一定の期間に返済をしない場合、これを、Division 7Aの問題と言います。この法律への訂正が発表され、2019年7月1日から施行される予定でしたが、今回の予算案により、2020年7月1日まで延期されました。訂正内容は、返済期間の一本化(現在は7年間と25年間がありますが、一律で10年になる)などです。

 

Australian Business Number(ABN)を持つ場合の条件が強化

ABNを持つ納税者については、以下が義務付けられます。

  • 2021年7月1日より、税申告が必須(非課税額に達しなくても)
  • 2022年7月1日より、ABN登録内容に間違いがないか、毎年確認

 

Single Touch Payrollの役割が広まります

シングルタッチペイロール(STP)と呼ばれるオンラインでの給料報告のシステムが、2019年7月から全ての雇用主に義務付けられます。STPを通して、従業員への給与やスーパーの義務がオンタイムで報告されます。STPを他の政府当局でも活用していくようです。

 

スーパーアニュエーション

スーパー積み立ての年齢制限が引き上げ

2020年7月1日から、スーパーアニュエーションを積み立てる年齢制限が、65歳から66歳まで引き上げられます。現在、65歳から74歳である場合、30日の期間で、最低40時間は就労していないと、スーパーアニュエーションに積み立てができません。しかし、この年齢制限が、66歳から74歳となります。 ということは、65歳も66歳もスーパー積み立てに制限はなくなります。3年分をまとめて前もって積み立てる方法も、66歳までならばできるようになります。

 

配偶者のためのスーパー積み立て

現在は、70歳以上の配偶者のためにスーパーを積み立てることはできませんが、2020年1月から、74歳までの配偶者については、スーパーを積み立てることができるようになります。

 

その他 予算は、このように使われる

農林水産業者と観光業者への還付

2019年7月1日より、農林水産業者および観光業者が高級車を購入した際に支払うLuxury Car Tax(高級車への課税)を、最大で$10,000まで還付します。現状では、農林水産業者および観光業者が、対象となる四輪駆動車や前輪駆動車を購入し、そこに課せられるLuxury Car Taxについては、最大で$3,000の還付がされます。対象となる農林水産業者および観光業者、車両の種類については、以下のATOサイトを参照。

https://www.ato.gov.au/business/luxury-car-tax/adjustments,-credits-and-refunds/credits-and-refunds/?anchor=Refunds#Refunds

 

北部クィーンズランド州洪水被害への復旧救助

北部クィーンズランド州で洪水により、多くの農林水産業者、小規模事業および非営利団体が多大な被害を被りました。政府は、これらの納税者が、対象となる補助金を受け取った場合、これらの補助金を免税扱いとします。対象となる補助金は、以下となります。

  • Disaster Recovery Funding Arrangement 2018 Category C またはCategory D
  • On-Farm Restocking and Replanting Grants Program による補助金
  • On-Farm Infrastructure Grants Programによる補助金

 

クィーンズランド州雷雨被害者への免税

2018年10月に、Fassifern Valleyで発生した雷雨による被害を受けた農林水産業者への補助金を、免税として扱いとします。

 

牧場主への救助

厳しい環境におられる牧場主は、その家畜を売ることを余儀なくされることもあります。この売却から得られた収入は、所得として、牧場主への補助金であるFarm Household Allowanceを得るための所得テストの対象となってきました。しかし、今回の予算案によると、2018/2019年度から2年にかけて、家畜を売却することを余儀なくされた場合、そこから得られる所得は、この補助金への所得テストの対象から免除されることになります。

 

偽契約防止への投資

本来ならば従業員として雇用するべきのところを、給与への源泉徴収やスーパーの義務を逃れ、最低賃金をごまかす目的で、従業員にABNを取得させている雇用主を見つけ出すための組織が、フェアワーク内に設立されます。

 

脱税を阻止するATOの専門部署を更に強化

国際的、大規模な株式公開、非公開会社、トラスト、富裕層をターゲットとした、脱税対策専門委員会が、更に強化され、約$1Billion (10憶豪ドル)が注入されます。

 

未払いの税金やスーパー徴集への活動強化

政府は、未払いの税金やスーパーを徴集するために、$42.1Million(4,210万豪ドル)を注入し、徴集活動を強化します。