オーストラリア国税局(ATO)小規模事業の基準
注釈:最近、ATOは、100種類以上の業界の基準値を認定しました。今後も、より多くの業界の基準値が設定されるということです。
各業界の基準値が、ATOにより設定されてきましたた。 その目的は、それぞれの業界の大中小事業の「あるべき」数値、例えば収入に対する経費の比率など、の範囲を示すためです。
こうした業界の基準値を設定することにより、現金商売をしている事業で、現金売上を「ごまかし」たり、現金で給与を支払っていたり、二重帳簿をつけていたり、売上や仕入れを正しく記録していないようなケースを見つけていくことをATOは目指しています。
最近発行された文書「記帳と現金による取引 - ’Record keeping and cash transactions’」によると、とにかく記帳をきちんとしていくことが重要だと、ATOは指摘しています。
もしも、事業が、ATOに報告している収入と経費を裏付けることができる記録がなく、しかもそれらの記録が業界基準値に満たない場合には、ATOは業界基準に一致するように、税申告書を訂正するということです。
実際には、業界基準はどのように機能するのか?
ピザのテイクアウエイのお店を例に挙げます。ATOが設定した業界基準値によると、ピザ店の平均売上は、年間で$150,000から$600,000、売上原価率は40%だとされています。
ということは、もしもピザ店の売上が$200,000である場合、売上原価が$120,000(60%)だとしたら、ATOは、基準値内の数字ではないということで、事業主に連絡する可能性があります。
もしも、基準値内でない訳を証明できる資料を、事業主が提出できない場合には、ATOは、一度報告された数字を、基準値に合うように調整する可能性があります。(例:売上を$300,000増やすことにより、売上原価$120,000が、売上の40%になるように調整するなど)。
注釈:基準値確立は、基準値内で事業を行っているのか、または基準値内でないとしたら、その理由を証明する記録があるのかを判断する材料となります。もしも、皆様の事業の数字が、その業界の基準内に位置するのかどうかの確認、または記帳方法などについての質問がある場合には、当事務所までご連絡ください。
契約社員への支払いに関するデータ:
ATOの新照合プログラム
ATOは、2010年から2013年度の間に、約75,000人の契約社員への支払いについて、情報を収集してきています。
収集された情報は、ATOのデータと照合され、税法に基づいた申告や報告がされていない支払いを確認していくとのことです。その結果、ATOは以下のプログラムを実行していくとしています。
u 正しく納税していないと見られる契約社員の素行を確認する
u 自発的に申告・報告を奨励するために、契約社員たちに対して的確な教育をするような戦略を確立していく。
注釈:ATOのホームページには、従業員か契約社員かを決定するのに参考となる、「従業員か契約社員かの判断機能– ‘decision tool’」というページが掲載されています。
搭乗しない旅客へ発行された航空券にも消費税はかかる?
注釈:以下は、何らかの商品やサービスを供給するために集金したが、実際には商品やサービスを供給しないことがある事業にとっては、重要なケースです。返金をしない限り、消費税の対象になる可能性があるということになります。
カンタス航空に対して、最高裁判所は、「一度受け取った航空運賃を払い戻さない(または払い戻されるが受取人が申請しない)場合に、航空運賃に含まれる消費税を、納税するべきだ」と、判決を下しました。「対価に対する供給はされた」として、乗客が購入した航空券の便を利用しなくても、カンタス航空は、消費税を納める義務があるという判決内容です。
これに対し、カンタス航空は、利用されなかった便の航空運賃に含まれる消費税を納税する義務はないと反論しました。
しかし、利用便予約に関する契約書を再度確認したところ、カンタス航空は、飛行機を運航するにあたり、「乗客と荷物を運送するために最善の努力を尽くす」
という約束を、少なくとも「供給」していると結論付けました。従って、これは「課税対象となる供給」が乗客により受け取られたため、カンタス航空は、消費税を納税する義務があるということです。
スーパーファンドへの積立上限:
個人で75歳以上の場合
2012年7月1日より、経費として申告できる(所得をその分減らすことができるので節税になる)年金の積立の上限は、一様に$25,000となりました。(年齢に関係なくなりました)
しかし、ATOは、以下の忠告をしています。
年金基金(スーパーファンド)は、これまで通り、75歳以上の従業員に関しては、雇用主からの法定積立のみを受け付ける。
雇用主からの法定積立が75歳以上の従業員のためにされた場合、$25,000上限ルールが適用される。
雇用主からの法定積立以外の積立は、75歳以上の場合は適用されない。
注釈:雇用主からの法定積立とは、雇用主にYよる従業員のための最低限法定積立(今現在70歳以上の従業員の場合には、積立の義務はないが、2013年7月1日より、年齢に関係なく積み立てる義務がある)、また、労働法による積立のことです。
車両を従業員に支給する場合にはご注意!
本会計年度において、ATOは、2011および2012 FBT(付加給付税)年度内に車を購入した雇用主が、FBTの義務を怠っていないかどうか、確認するキャンペーンを開始するとのことです。
注釈:FBTとは、社用車両を従業員に支給することにより発生する付加給付税のことで、その会計年度は。4月1日から翌年の3月31日までです。
必要な情報は、車両登録団体から得られ、社用車を購入したが、FBTに登録していない雇用主の身元を確認します。
その結果、ATOはおよそ5,000雇用主に手紙を送り、FBTとは何か、そのルールに従うためには何をした
ら良いのかを説明していきます。
ATOがとくに注目するのは以下の点です。
・ 車両が自宅のガレージに停めてある場合には、私用車であると見なします。
・ 一般的に、通勤に使用している車両は、私用車と見なします。
・ 従業員が私用で社用車を使用する場合には、限られた場合においてのみFBTは免除されます。
ディレクターの義務
注釈:近頃、会社のディレクターとしての義務に関する改正がありました。ATOは、この改正により、ある一定の会社の義務を怠った場合、ディレクターの個人的責任になる場合があるので、注意をするようにと呼びかけています。
2012年6月29日、会社が不正な活動を行ったり、従業員が受けるべき権利や支払いから、会社が逃れることを阻止するために、税法に改正がされました。
その改正内容を以下にまとめました。
・ スーパーへの法定最低積立がされない場合、ディレクター個人に罰金が課せられることとなりました。
・ 従業員への給料からの源泉徴収や、スーパーへの法定最低積立がされていない場合、または期日までに申告されていない場合には、ディレクターは、それらの義務を、会社を行政または破産管理者の管理下におくことにより、罰金から免除されるのを防ぐ。
・ 会社がATOに対して納税する義務のある源泉徴収税の納税を怠った場合には、場合によっては、ディレクターおよびその家族などの関係者に対して「源泉徴収不履行税」を課すこともある。それにより、ディレクター自身または関係者に支払われた給与からの源泉徴収額を減らし、その分、(ディレクターや家族などの関係者の)納税額が多くなるという仕組みを適用。
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