オーストラリア連邦政府2012-13年予算案発表
オーストラリア政府は2012年5月8日、連邦議会に2012会計年度(12年7月~13年6月)の予算案を
提出しました。ギラード首相は国防費などの削減で、約15億豪ドルの黒字に転化するとしています。
以下に、「税金」に関する2012/13年度予算案をまとめてみました。
個人納税者
- オーストラリアでは、ある一定の所得を得る納税者に、1.5%の医療税を課しています。
2011年度の場合には、独身者で$18,839以下の所得を得ている場合には、医療税はかかり
ませんでした。この非課税額が、2012年度には$19,404、2013年度には$20,542まで
引き上げられます。非課税額については、納税者に家族がいる場合、子どもがいる場合、年齢、
またオーストラリア政府から年金を受けとる資格があるかどうかにより変ってきます。 - 非居住者の税率が、2012年7月1日より変ります。
2012年度までは、$37,000までの所得に対して、29%の税率を適用していましたが、
2012年7月1日より、$80,000までの所得に対して32.5%の税率が適用され、翌年には、
税率は33%に増えます。以下の表に、所得による税率の違いをまとめました(累進課税となります)。
2012年7月1日より | 2013年7月1日より | |
所得額 | 税率 | 税率 |
$0 – $80,000 | 32.5% | 33% |
$80,000 – $180,000 | $80,000を越えた金額には37%。$80,000までの所得には$26,000* | $80,000を越えた金額には37%。$80,000までの所得には$26,400 |
$180,001以上 | $180,000を越えた金額には45%。$180,000までの所得には$63,000 | $80,000を越えた金額には45%。$180,000までの所得には$63,400 |
*例えば、$100,000の所得に対しての税金は以下のように計算する。
$26,000+($100,000-$80,000)×37%=$26,000+$7,400=$33,400
尚、今回の予算案以前に決まっていたことですが、居住者の税率は、炭素税の導入に伴い、
非課税額がこれまでの$6,000から$18,000に引き上げられ、2012年7月1日よりの新税率は、
以下のようになります (医療税は含まれておりません)。
所得額 | 税率 |
$0 – $18,200 | 0% |
$18,201 – $37,000 | $18,200を越えた金額には19% |
$37,001 – $80,000 | $37,000を越えた金額には32.5%。$37,000までの所得には$3,572 |
$80,001 – $180,000 | $80,000を越えた金額には37%。$80,000までの所得には$17,547 |
$180,001以上 | $180,000を越えた金額には45%。$180,000までの所得には$54,547 |
- これまで、Education Tax Refund(ETR)と言って、小学校または高校に通う子どもを持つ
家庭に対して、学用品、コンピュータまたはインターネットなどにかかった費用(2011年7月1日
からは制服にも適用)に対して、小学生で最高$397、高校生で$794までが控除の対象と
されています。ERTは、2012年7月1日より、Schoolkids Bonusという制度に変ります。
これまでは、タックスリターンの中で控除として計算され、レシートがあることが義務付けられて
いました。しかし、新しいSchoolkids Bonusにおいては、実際の補助金が、各家庭に支給されます。
支給額は、小学生一人に対して$410、高校生一人に対して$820です。
補助金支給の時期は、1月と7月の2回に分けて支給されることになります(2013年1月から)。
ただし、対象となる家族は、センターリンクより Family Tax Benefit A を受け取っていることが
条件となります。 - Family Tax Benefit Aをセンターリンクから受け取ることができる資格の内容が変ります。
これまでは、最高で子どもの年齢が24歳である場合まで受け取ることができていましたが、通常
子どもの年齢が18歳以下でないと受け取ることができなくなります(子どもが19歳で高校に
通っている場合には、19歳になる年の年度末までは、受け取り資格があります)。
尚、家族の収入額、何人子どもがいるのかにより受け取り資格が決まります。
新しい年齢の基準は、2013年1月1日より適用されます。 - これまでは、個人が資産を売却または譲渡した場合に得られる利益「キャピタルゲイン」に
対しては、もしもその資産を12ヶ月以上所有していれば、利益の50%、すなわち半分にしか
税金は課せられませんでした。しかし、2012年5月8日以降に発生するキャピタルゲインを
非居住者が得た場合には、この50%ディスカウントルールは適用されなくなります。
非居住者が、オーストラリア国税局に対して納税する義務があるキャピタルゲインは、オーストラリアに
関連する資産を売却また譲渡した場合にのみ発生しますが、それでも50%ディスカウントルールが廃止
されるということで、海外の投資家には大きな影響があることでしょう。
法人・ビジネス
- 法人の税金上の損金については、将来の利益と相殺することができるというルールが、
オーストラリアの税法にはあります。新税法により、会社が2013年度(2012年7月1日より)
に損金を発生させた場合、前年度、すなわち2012年度に納税した法人税と相殺できるという
ことになりました。また、2014年度よりは最高で2年前に納税した法人税と相殺することが
できるようになります。毎年$1,000,000の損益までを相殺することができるので、最高で
$300,000を節約することが可能になります(法人税率は30%)。
例えば、A社の2012年度の納税額が$3,000であった場合、すなわち利益は$10,000でした。
しかし、翌年の2013年度に損金が$20,000発生した場合、このうち$10,000を2012年度の
利益である$10,000と相殺することにより、2012年度に納税した$3,000の還付を受けることが
可能となるわけです。
- 駐在員等の遠隔地勤務者に支給される手当て(Living Away From Home Allowance,
略してLAFHA)に関する税金の取り扱いについて、2012年7月1日より大幅に変更されることに
なりました。これまでは、駐在員等遠隔地勤務者に支給される、手当て(住居や一部の食費)に
ついては、FBTと呼ばれる付加給付税(給与や報酬以外の形で、雇用主から恩恵を受け取った場合、
その恩恵にかかる税金)の対象となっていませんでした。また雇用主側としては、そういった
手当てをビジネス上の「経費」として認められてきました。ところが、2012年7月1日より、オーストラリア
国内に自宅を持ち、実際に勤務のために自宅から離れることを余儀なくされている従業員にのみ、
LAFHAが適用されることとなります。しかも、その適用期間は、最長で12ヶ月までとされます。
経過措置として、2012年5月8日時点ですでに認められているLAFHAについては、2014年6月末
までこれまでの税控除を認めるとしています。
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